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人里離れた所に一軒の民家があった。
ある旅人は何日もの間彷徨いその場所へとようやくたどり着いた。
畑も家畜も揃ったこの家には60歳ほどの男と20程の女と14程の双子が住んでいた。
奇妙なことに40程も離れたこの男女は夫婦であり 女と10程しか離れていない双子は女の方の連れ子であるという。
家族の好意をありがたく受け取り旅人は何日もその場所にとどまった。
ある日 男と旅人が二人きりになった時に男はこう切り出した
「あなたさえよければ私の代わりをしてくれないか」
何のことだか分らない旅人は詳しく問おうとしたのだが男はそれ以上は何も言わなかった。
それから何度か旅人が旅立ちの為腰を上げようとしたのだが
その度に男に呼び止められ更に季節一つ分をその場所で過ごした。
あまりにも男が言うのでとうとう旅人は
「数日の間ならあなたの代わりにここにいてもよい。そのかわり理由を聞かせてほしい」と言った。
約束を違えないならと男は旅人に約束をさせられそれを飲んだ。
男は話し始めた
「家内と出会ったのは もう40年以上前のこと
当初 彼女は自分より年上で独り身だった。
故郷を追い出されて迷い込んでここで彼女に会い 彼女に恋をした。
夫婦の契りを結んで暫くは何事もない普通の家族だった。
3年ほどたったある日突然彼女があの双子を連れてきて自分の子供だといった
私は奇妙でならなかったが何も言わなかった
更に数年と経ち 私は彼女たちが人間でないことに気付いた。
何年たっても彼女たちは同じ姿 同じ声で 私だけが老いていったのだ。
私は彼女たちを愛しているし彼女たちも私の事を愛してくれている。
だからこそ 今の内に私の代わりを見つけておきたいのだ
私はもう長くはないだろう。
私は彼女たちにわかれというものを目の前で見せつけたくはないのだ。
彼女たちはこのまま同じ姿でここにいるのだろう
だが私が目の前で死んでしまったら彼女たちも共に止まってしまう気がしてならないのだ。
だから 旅人さん 次の誰かまで いや 飽きるまででもいい
彼女たちと共にいてやってはくれないか。」
旅人は真摯に男の話を四十聞き ゆっくりと頷いた。
「いいでしょう。 でもここを去る前に私の話も少し聞いて頂けませんか」
旅人はそう言うと古びてぼろぼろになった手帳を男に差し出した。
男は受け取るとおもむろに手帳をめくって書かれてある日付に目を見開いた。
「私は随分長い間旅をしてきました。
それは自分と同じ者を探すためです。」
開いた手帳には百何十年と前の日付が記されていた。
男は安心して長く住んだ家を離れ 旅人は家の新たな住人となった。
その後も その場所には迷い込んだ旅人たちを迎える仲のよさそうな家族がいるそうな
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