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とても美しい女が居た。
女は多くの男の求愛を受けたが、決して首を縦には振る事は無かった。
ある時美しい女は街で一番醜いと言われる男に愛を告げた。
その顔の骨が歪み、片目は飛び出しそうで、背も女より低い、
とても美麗という言葉には遠い容貌をした男だった。
男は女の言葉を「からかいはよしてくれ」と撥ね退けた。
男が女の言葉を信じていないと解った女は、幾度も男の下を訪ね自分の胸の内を明かした。
町の者はその男に嫉妬し、様々な嫌がらせを行った。
女はその事に気付き町の者達に止めるよう言ったが、
そうやって擁護する度に町の者達の嫉妬は燃え上がっていった。
女が町の者達を説得するために男の者を訪れる事は少なくなっていったが
女の想いが本気である事は益々明確に周囲へと知れていった。
疲れた毎日を送って倒れるように眠っていたある夜、窓の外の明るさに女は目を覚ました。
男の住む森の方がとても明るい。
女が家を飛び出して見ると、森は轟々と大きな炎を揚げて燃えている。
燃え盛る森に飛び込み男の下へ走ったが、
既に家は火に呑まれ影のみが炎の中に浮かぶだけとなっていた。
女はその場に崩れ落ち、一声だけ慟哭すると、そのままそこで泣き続けた。
すっかり火の収まった頃に、町の者が女が居ない事に気付いて慌てて捜索してた。
男の家の近くで発見された女は、手足と顔に大きな火傷を負って、髪は熱で溶けてしまい、
美しいと言われた容貌はすっかりと消え失せてしまっていた
それと同時に町の者達の女への興味もすっかりと冷め、
誰も以前のように求愛などしなくなった。
女は火傷により皮膚をやられ、数日後に息を引き取った。
独りになった女を哀れに思った近隣の婆が死に水を取ったが
女の最後の言葉は『もっと早くに自分で顔を潰してしまえばよかった』だと聞いた。
女があの大火事でその場で死ななかったのは、
先に死んだあの醜い男の霊が女を守っていたからではないかと、
後に不気味な話として語られる事となった。
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